映画『シャザム!』日本語吹き替え版を字幕版と見比べてみた話。百聞は一見にしかず。

『シャザム!』観てきました。
世界中で大ヒットした『アクアマン』に続く、DCの新作映画として話題の今作。 僕もずっと楽しみでした。DC映画をこれまで以上に大きく変える作品だと思い、期待していました。


ところが今作、思わぬ形でさらなる話題を引き起こすことに......


はい、吹き替え問題です。


『勇者ヨシヒコ』『銀魂』『今日から俺は』などの福田雄一監督が、吹替版の監修と演出をやることに。


そして、福田監督が主役の声優に選んだのは菅田将暉。


これが荒れに荒れます。荒れること烈火の如し。まあこれだけなら、タレント声優嫌いの批判で済んだのでしょうが、福田監督の発言が火に油ドボドボで大炎上です。


「つまらなかったらどうしようと思った(笑)」という発言や、「コンセプトは『菅田将暉と銀魂の愉快な仲間たち』」とか言っちゃいます。


そういうところが、作品にリスペクトがない!ふざけんな!!とファンの逆鱗に触れてしまった次第です。


まあどうせ、アメコミファンとして映画がちゃんと面白いものになっているのか心配だったとかそういうニュアンスで言ったつもりなんでしょ。


日本で漫画が実写化されたときの原作ファンの気持ちと同じですよ。でもあの場で言う必要はないですよね。言い方も悪いし。


菅田将暉を選んだ理由も「一緒に仕事をした経験からぴったりだと思った」とか言っとけばいいのに、しょうもないウケ狙って余計なことを言うから炎上するんですよ。


身内ネタがどこでもおもしろいと思ってるんですかね。大学生じゃないんだからさー。


で、他人の作品を私物化している、オリジナルを無視して作品を台無しにされるなどの批判が殺到。


馬鹿ですね〜。いや〜馬鹿ですね〜。


そして福田監督やDC公式がツイートすれば「字幕でみます」って煽られたり、クソだなんだと言われたり。


でもね、ひとつ確認したいんですけど、みんな見てないんですよね?福田監督の発言が良くないのは確かだがオリジナルを壊しているとか福田ワールドが暴走してるとかは見てみないとわからないですよね。菅田将暉がひどいかどうかは全部見てみないとわからないですよね。


予告編の一部を見てあんなにボロクソ言うのはそれもちょっと違うんじゃないかと思うんです。


ということで吹替版観てきました。


11:50〜14:15の字幕版を観てから14:40〜17:05の吹替版を観る完璧なスケジュールです。


しっかり見比べましたよ。


さあ、前置きが長くなりましたが、ここから吹き替えは実際どうだったかの感想です。


※あくまでも僕個人の意見ですのでそこはよろしくおねがいします。


まず、ざっくり結論から言うと、「福田ワールドの暴走はしていない。」です。


作品を私物化しているような印象はありませんでしたし、オリジナルを壊すほど大きく逸脱した演出もありませんでした。


真っ当に仕事をしたんだなという印象です。


ということでみなさん、字幕がおすすめです。


わかってますわかってます。ちゃんと理由あります。 簡単に言うと細かいマイナスポイントが積み重なった感じですね。


まず、前述の通り、福田ワールドの暴走はありません。ほぼ字幕版と同じ通りに訳されています。ところどころ表現を変えてはいますが日本人によりわかりやすく表現をした結果であり、どの吹き替え映画でもやっていることです。 吹き替え監修としての仕事を誠実に行っていると思いますよ。


では次に吹き替え演出としてはどうなのか。
これもまあブチギレ案件ではないと思います。


ギャグの内容とか、例えば、ヒーロー名を考えるもダサい名前しか出てこないシーンでは、出てくる名前が字幕と吹き替えでは全然違います。


ただ物語に影響するような場面ではないですし、吹替版を見に来るであろう客層(家族連れなど)に、より伝わりやすい表現にしたんだろうなという気は伝わります。


面白くはなかったですけど。


あとはビールを飲んで吹き出すシーンなんかは福田節が若干でてましたけどシャザムの世界観の範疇です。


あ、でもシャザムにはじめて変身するシーンはけっこう福田節がでてて「うわ、いまの最悪だ」って思いましたね。だからゼロではないです。


演出面で言いたいことは他にもあります。
福田節がどうよりもこっちの方が気に入りませんでしたね。


あえてキャラになにも言わせないことで笑いを生んだり、感情を表現しているシーンというのが『シャザム!』にはいくつかあります。


つまり観客の想像力を使うということですね。


吹替版では、その「間」にセリフを詰め込んで、ツッコミや心情をキャラに喋らせています。


これが気に入りませんでしたねー。 そんなに過剰に説明しなくてもわかるよって思っちゃいます。


見方によってはこっちのほうがいいという場合もあるんでしょうけどね。というのもボケてツッコんでっていう形がしっかりしている方が日本人には馴染みやすいのではないかなと思うのです。
ちゃんと全部言ってあげる優しさもありますよね。


とはいえ、“間”だって製作者が緻密な計算の元に作っているんですから、勝手にそこをいじるなって思うので、僕は気に入りませんけど。


演出の部分でもうひとつ。
これけっこう大きいです。


主人公のビリーがヒーローとしての覚悟を得るクライマックス手前の場面。


このきっかけをつくることになる、ある人に対する印象が吹き替えと字幕では真逆になります。


良い悪いは正直、人によります。
ネタバレになっちゃうので詳しくは言いませんが、僕的にはスーパーウルトラマイナスポイントですね。そうじゃねーだろ!って叫びたかったです。


福田監督が字幕版と大きく変えたところは実質ここだけですかね。 どっちが良いかは是非観て比べていただきたい。


演出面はそれくらいですね。作品の世界観を壊すようなことはしていないが所々福田監督らしいギャグ表現が若干だがでているといった感じです。


さあそして、お待ちかねの声優問題に行きましょう。


はーい、みんなのお怒りポイントはここですよねー。 「菅田将暉と銀魂の愉快な仲間たち」ですもんねー。ふざけてますねー。もうアメコミ映画に関わらないでほしいと思うほどふざけた発言ですねー。


ただし!イコール吹き替えの出来がクソ。にはなりません。ひどいかどうかは観るまでわからない。


菅田将暉、佐藤二朗の二人以外はプロの声優ですし、お二方も素晴らしい役者さんです。


先にも書きましたけど菅田将暉が全編通してクソかはわからないですよね。


百聞は一見にしかずです。



























こりゃ駄目だな!!




菅田将暉さん好きなんですけどこれは擁護できません。


もう菅田将暉の声が全く合ってない。浮きすぎて画面の前に菅田将暉が現れてます。


演技の上手い俳優なのは確かなので、棒読みなんてことはありません。頑張ってるのはすごく伝わってきます。


福田監督も言ってました。「完全に菅田くんだった」


間違いない。全くもって間違いない。


完全に菅田くんでしたよ。


菅田くんしか見えなかったです。


でもさー、菅田将暉じゃ駄目でしょー。あなたは菅田将暉じゃなくてビリーなんじゃないの?


福田監督、あんたはなにいってんだ。


とにかく、映画に声が全く馴染んでない。たまに低い声をだしたときなんかは「お、意外といいじゃん」なんて思ったけど、すぐ菅田将暉に戻るから、結局最後まで違和感ゴリゴリでした。


だいたい菅田将暉の声が合うわけないじゃん。大人っぽい声だからギャップがあっていいんじゃん。菅田くんじゃ声高すぎるよ。


「なんだこれー!」ってセリフめちゃくちゃ面白かったです。


それにね。銀魂の愉快な仲間たちチームがうますぎるから余計浮いて聞こえる。


彼らはプロですからね。役そのものです。それに前述の通り演出は真っ当ですから変なかけ合いとか銀魂を意識させるようなおふざけもありません。
ならなおさら菅田将暉浮きますよね。


で、子どもの姿の時のビリーはプロ声優で大人の姿になったら菅田将暉です。


もう可哀想になってくるレベルです。
菅田くんが頑張れば頑張るほどこっちは苦笑いするしかありません。


これでクソほど棒読みで映画観るのを放棄したくなるレベルなら、水を得た魚のように煽れるんですけど、そうじゃないからつらい...


銀魂の愉快な仲間たちが菅田将暉を殺しにかかっています。
全然愉快じゃないです。


やっぱり声だけで演技するというのはまた違ったものなんですね。
アニメの吹き替えともまた違うのでしょう。


仮に今後も菅田将暉がシャザムを演じるのなら、ジャスティス・リーグやその他諸々でこれを聞かなきゃいけないって考えるとちょっときついです......


今回の吹き替え版、誰も悪くないです。菅田将暉も福田雄一もオファーがあったから受けただけで、彼らは求められた仕事をしただけです。 オファーしたワーナーブラザーズジャパンも興行を考えた結果です。だって対抗馬がアベンジャーズとコナンですよ......絶望でしょうよ。


それでもクソだけどね。


第一、吹き替えを観ないでボロクソ言ってる人たちのいったい何割が映画館に字幕版を観に行くんでしょうね。


この悲劇を生み出したのは日本国民全員ですよ。
こんなことしなくても興行が見込めるならしないんだから。


だから悲劇を繰り返さないためにも、みなさん映画館に行きましょう。『シャザム!』めちゃくちゃ面白いから観に行きましょ。


『シャザム!』以外も観に行きましょ。


以上!終わり。


え、佐藤二朗?いいんじゃないですかね。僕は好きでしたよ。