【感想】映画『東京リベンジャーズ』“実写化"は成功しているけど“実写映画化”には失敗している。

映画『東京リベンジャーズ』の感想です。


前半ネタバレなし、後半ネタバレありです。
ネタバレ感想に行く前に忠告していますので、見逃さないように気をつけてね。



目次





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映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』公式サイト


監督:英勉
脚本:高橋泉
原作:和久井健『東京卍リベンジャーズ』(講談社「週刊少年マガジン」)
主題歌:「名前を呼ぶよ」SUPER BEAVER
音楽:やまだ豊
撮影:江崎朋生
出演:北村匠海、山田裕貴、杉野遥亮、今田美桜、鈴木伸之、磯村勇斗、間宮祥太朗、吉沢亮、真栄田郷敦、堀家一希、清水尋也、湊祥希





実写化は成功しているけど......


僕はミーハーなので世間の皆様同様にアニメ化してから大ハマりして漫画を全巻買った口です。
なんか「卍」ってついてるしただのヤンキー漫画でしょ?って思ってて大変申し訳ないです。


まあ、そんなことは置いておいて、映画の感想なんですけど、表題の通り““実写化””には成功しているけど““実写映画化””としてはどうかなという感じです。


漫画だったりアニメ作品を実写で映像化する際に大事なのって、キャラの見た目とかもそうなんだけど、それ以上に実写でやる「意味」だと思うんですよね。


ただ2次元を3次元にということならコスプレでいいわけですし、ストーリや表現だって再現するだけなら漫画やアニメを観ればいいだけの話です。


実写だからできる表現とか試み、実写だから生まれるメッセージとかがあるからわざわざ実写化するわけじゃないですか。それが実写で映像化する「意味」で、僕が勝手に定義して使っている「実写【映画化】」ということなんですけど。かといってビジュアルがかけ離れていたり、原作全無視のストーリー展開だったりするとそれはそれで怒るんですけどね。人間って嫌な生き物ですね。


ということで、そういう面で見ると、実写化失敗とは言わないけど、というかむしろ成功ではあると思うんだけど、果たして実写映画化する意義があったかと言われればどうだろうか......


原作4巻分を2時間にまとめるという点では上手いこと整理してやっていたけど、そこに映画独自の面白さがあったかといえばそういうわけでもなく、単にカットして再現しただけに終わっていないでしょうか。


映画後半は特に原作からの細かな改変が多く、それ自体は物語を整理するために必要なことではあるから良いんだけど、結局は中途半端になっている印象は否めない。


役者陣の演技は素晴らしくて、それだけでも見どころはあるんだけど、じゃあ映画が面白かったかというのとは別ですからね。


この先はネタバレありで良かったところと悪かったところをより詳しく書いていきますので、まだ観ていないよって人はここでブラウザバックしていただければと思います。観賞後にもう一度読みに来てくれると嬉しいです。この先も読んでいただける方、ありがとうございます。是非とも最後までよろしくお願いいたします。

(C)和久井健/講談社 (C)2020 「東京リベンジャーズ」製作委員会


細かな改変がプラスの方向に作用していない(ネタバレあり)


原作漫画からの改変について話していこうと思います。


大きな変更点としては
・パーちんが長内を刺すくだりがなくなっている。
・エマの存在が削除されている。
・それによってクライマックスのバトルで出てくる登場人物が変わっている。


こんなところでしょうか。他にも大人タケミチの人間関係が変わっているとか、漫画ではなかったシーンが追加されているとか細かいところはたくさんありますけど、大きなところで言えばそんなもんかな。


で、例えば大人タケミチの人間関係が変わっているとかは実写映画化するにおいて効果のある改変なんですよ。


主人公の生活がより身近になるので、その後の成長が自分事に感じられやすくなっているわけですね。ちゃんと後に出てくるセリフだったり展開にもかかっているのでそこは良いと思います。それでも映画化する意義になっているかというとどうかと思いますけど。


このように改変すること自体は、物語を整理するために必要なことですし、新たなメッセージ性を加えることもできるので悪いことではないです。


ただ、さっき挙げた大きな変更点の部分。まあエマが出てこないとかは別にいいんですけど、パーちん周りの改変ですよ。


パーちんが長内を刺すくだりがなくなることで、この後起きる夏祭りでの戦闘で長内が再登場するんですけど




これいらなくないですか?


というのも、このせいでマイキーの強さがよくわからないという現象が起きているんですよ。


十数分前に圧倒的強さを見せてK.Oした敵にクライマックスのバトルではめちゃくちゃ苦戦しているというわけのわからない状況になっている。
ドラケンの時みたいに数の暴力で苦戦するとかなら理解できるんですけど、そういうわけではないから相対的にマイキーが弱く見えるんですよね。


この辺なんかは原作のまんま半間を出していても何も問題はないし、映画の全体像的にもそっちの方が良いと思う。


じゃあ長内どうすんだってなるけど、あっくんがタケミチを殺せなくて綺咲に詰められるシーンありますよね。あそこを過去にして長内が半間に詰められるシーンにすればいいだけの話なんですよ。それで長内を退場させればいい。プラスあっくんが現代で自殺するシーンで十分に綺咲の恐ろしさって伝わるはずなんですよ。あっくんが綺咲におびえている描写を何度も入れる必要がない。


あとは半間が戦わないことで、この二人がなんのために映画にいるのかが分からなくなっているんですよね。一応黒幕だろうということはわかるけど原作がそうだからというだけで、映画的になにか意味があるかというと何もない。


ここは原作と同じように半間が戦うでいいと思うんですけどね。マイキーが苦戦するほどの強さで得体のしれない人物、ここを改変する意味がわからない。続編への含みを持たせてみたいな意味合いなんでしょうけど、そこは半間が戦おうと戦わまいとなにも変わらないですよね。

(C)和久井健/講談社 (C)2020 「東京リベンジャーズ」製作委員会


こういうチグハグさが随所で気になってしまったんですよねー。


あとすごく気になったのが人数の問題。そんな少ないの?!っていうね。


クライマックスのバトルも人数が少ないからイマイチ迫力が欠けるし、ドラケンひとりだと苦戦するのはわかるけど、マイキー達が助けに来たあとにあんなに苦戦するのはやっぱりよくわからない。 他の隊長メンバーも幹部でもないやつにめちゃくちゃ苦戦していてそんなに強く見えないですし。


予算の問題等もあるんだろうけど、そこは映画の説得力に関わってくる問題なんだからもうちょっとなんとかしてほしかった。


少ないなら少ないで、それをカバーする見せ方ってあると思うんですよね。
例えば集会のシーンだったら、マイキーの目線から隊員達を映すんじゃなくて、隊員達の背中越しにマイキーを映すとか。画面の端に隊員が映るように撮るとか。スカスカ感が半端なかったんですよね。東京卍會ってこんなもんなだと思ってしまいました。


原作をリスペクトしていることや、その中でどこをカットするのか、どこを主軸にするのかということを決めるのに苦労したんだろうなということは伝わってきますけど、結果的に再現することに精一杯である感は否めません。






演技はすばらしい。


ただ、役者陣の演技に関しては本当に素晴らしくて、予告の段階ではミスマッチかなと思っていたキャスティングも蓋を開けてみれば見事な人選でした。


例えば山田裕貴演じるドラケンなんかは、漫画のキャラクター象と比べると、細いし小さいし顔もかわいいよりだしで、鈴木伸之の方がいいんじゃないのって感じなんだけど、いざ観るとちゃんとドラケンになっている。


鈴木伸之だって清正にしておくにはもったいない配役だなって思っていたけど、見事に清正。


吉沢亮にしろ今田美桜にしろ北村匠海にしろ、全員演技は素晴らしく、観客の事前のマイナスのイメージを実力で黙らすパワーがあった。杉野遥亮の中学生役はさすがに違和感あったけど......笑


アクションも全然悪くなくて、そこに対するビジュアルも良い。一応そこは今作の見どころではあると思います。再現度で言えばすごく良いですよ。

(C)和久井健/講談社 (C)2020 「東京リベンジャーズ」製作委員会


そう考えると、英勉監督は役者を魅せるすごく上手い監督なんだなと思います。『賭ケグルイ』『あさひなぐ』などもやっぱり演技で魅せる映画だったし。


なのに内容がどれもひどいのはなんとかならないものかね。『ぐらんぶる』みたいな元々内容なんて二の次みたいな作品なら全然良いんだけど、今作のようにどうしても内容が重要になってくる映画だとねー......


このあたりは脚本家次第なのかなー。物語面をコントロールできるような脚本家と組んだら全然違うのかもしれないですね。僕は見てないですけど、上田誠さん脚本の『前田建設ファンタジー営業部』とかはすごく評判が良いですからね。





終わりに


以上『東京リベンジャーズ』の感想です。


実写化としての再現度は素晴らしいけど、映画としての面白さでは微妙という感じでしたね。個人的にはわざわざ実写映画化する意義は感じられませんでした。


キャラの再現度が高いことが一番大事という方などには良いと思います。でも「面白かったけどやっぱり漫画だよねー」みたいになっちゃうんじゃないですかね。


漫画やアニメの実写映画化は難しいですね。あっ、主題歌よいなと思った人、SUPER BEAVERの他の曲も是非聞いてみてください。最高のジャパニーズポップスなので。


ではまた。