『ヘルタースケルター』見るMDMA、これは映画というより事件だ。

沢尻エリカ捕まりましたね。
沢尻エリカの本名って澤尻エリカなんですね。確かに澤尻よりは沢尻の方が良い気がします。どうでもいいですけど。


沢尻エリカといえばドラマ『タイヨウのうた』や『1リットルの涙』が有名ですね。 涙が止まらない感動大作です。


しかし、彼女の一番の代表作といえば『ヘルタースケルター』でしょう。異論は認めません。


『へルタースケルター』予告編

“別に”騒動のあと活動休止した彼女が復帰作として主演を務めたこの映画。


2007年の騒動のときからは想像もつかないほど上品(風な)になった見た目と、そんな彼女がかなり体当たりな役を務めるということで当時かなり話題になった作品です。


この作品で沢尻エリカは日本アカデミー賞の優秀主演女優賞を受賞し見事な復帰を遂げています。
体を張った演技が評価されたんですかね。今思い返すとあれは演技を超えていたんだなぁと思いますけど...
僕は「あっはっはの大笑いよ!」というセリフが一番好きです。


そんな『ヘルタースケルター』
例えるならまさに“見るMDMA”、つまり合成麻薬、いわば究極のトリップ体験。


当時のキャッチコピー「映画というより事件だ」に相応しい怪作となっています。

監督は写真家の蜷川実花さん。
2019年には、砂糖の一粒まで藤原竜也に従う『Diner/ダイナー』や小栗旬が死ぬほどの恋をする『人間失格 太宰治と3人の女たち』を監督しています。


ちなみに『人間失格』にも沢尻エリカ出演しています。


そんな蜷川実花監督の特徴はなんといっても色彩感覚。
目がチカチカするほどのきらびやかな映像で多くの人を虜にさせてきました。
ド派手な色彩感覚✕セックス=蜷川実花作品は頻出公式です。


そんな蜷川実花ワールドを果汁100%で世に送り出したのが『ヘルタースケルター』


全編真っ赤な映像とやたらと性行為をする2時間7分。
とにかく赤い!どこを見ても赤い!たまにピンク!
そして猛獣タイガー・リリィが所狭しと暴れまわりメンをヘラります。


主人公のりりこは芸能界の頂点で輝くトップスター。雑誌にテレビに引っ張りだこでどこを見てもりりこ一色です。
しかし、りりこの美貌の正体は整形で作り上げた作り物の美。日々崩れ行く美貌への恐怖、生まれ持った美しさでりりこを追い詰める後輩の登場。
次第に精神を蝕んでいくその姿にブラック・スワンかネオン・デーモン観たいなあ息の詰まる思いになります。


りりこはその美貌を活かして男女問わず数々の人間を手玉にとっていきます。
沢尻エリカ氏の体当たりっぷりは凄まじく、いきなり乳首全開ででてきたと思いきや濡れ場濡れ場濡れ場のオンパレードです。


窪塚洋介との長い絡みが終わったと思ったら矢継ぎ早に哀川翔との絡みが始まったときは焦りました。しかもその間に寺島しのぶと綾野剛の軽いジャブも挟んでくる怒涛の連打。


地獄の5分間でしたね。


しかも性行為のシーンだけやたらと音量がでかくなるというトラップ付き。セリフが聞こえないからと音量を上げると大音量の喘ぎ声が流れるので皆さん鑑賞の際は気をつけてください。
他にも急に音がでかくなったり小さくなったりする、観る者の音量調節能力が問われる玄人向け作品となっております。


楽屋で窪塚洋介といたす沢尻エリカ
その後哀川翔といたす沢尻エリカ
マネージャーの寺島しのぶといたす沢尻エリカ
寺島しのぶの彼氏の綾野剛と寺島しのぶの目の前でいたす沢尻エリカ
沢尻エリカに薬を飲まされて笑いながらいたす寺島しのぶと綾野剛


やたらと性行為シーンが多いのは、彼女の存在は人の欲望の象徴だという表現なんでしょうけど。あとは性と美は表裏一体ということでしょうか。知らんけど。


とにかく、蜷川実花監督がかなり「美」にこだわっているかは理解できましたか?


蜷川実花ワールドでは「美」こそが心理であり内容はどうでもよいのです。 監督の「美」の感性が自分に合うか合わないか、ただそれだけです。


とってつけたようなサスペンス要素や、薬物によるトリップ映像に「第九」を、主人公の精神が限界を迎えるクライマックスに「美しく青きドナウ」を使い、渋谷交差点をタイムラプス映像で流すなど気持ち良いほどの安直さは気にしたほうが負けなのです。


そんな今作で僕が一番好きなのが彼です。

大森南朋さん演じる検察官です。 彼は主人公の通う美容外科の闇を暴こうとしています。名前は知りません。


映画のサスペンス要素を一手に担う彼の役割は「例えること」です。
彼はすぐに物事を例えたがります。でてきては例え、単純な物事を複雑に、ポエトリックにして去っていきます。


「彼女の美しさはイメージのモンタージュ、つまり我々の欲望、まさにヘルタースケルター、つまりしっちゃかめっちゃか、いわば彼女は僕たちのジョーカー」は例え界激震の一句です


そして彼は主人公のりりこを例える言葉として渾身の一作を生み出します。「猛獣タイガー・リリイ」です。


これを気に入った彼はずっと言い続けます。誰もうまいと思っていないのに使い続けます。 彼と行動を共にする事務次官も最初こそ「ポエムですか?(笑)」とバカにしますが彼の粘り強さに最終的には諦めてスルーする次第です。


しまいにはりりこ本人のところに行き、直接言ってしまいます。 そして「何よそれ」と言われます。 あの散々狂ってたりりこに言われるって相当です。


僕は映像美よりも、沢尻エリカの乳首よりも、大森南朋演じる彼を推したい。彼は今作の裏の主人公だ。


そしてもう一つ、注目してほしいのが蜷川実花監督の当時のインタビュー記事です。

https://openers.jp/lounge/14848

今回は、大人のいかした男性、とくに有識者のかたがたに驚くほど評判が良くて、そんなに褒められたことがないので(笑)、とてもうれしいです。

この映画を批判する人は教養のないガキということです。 こんなこと言われたらこっちが何を言っても蜷川実花監督の勝ちです。僕の気持ちはまさにヘルタースケルター、つまりしっちゃかめっちゃかです。


でも僕は褒めているのでいかした男性です。


独特な色彩感覚、体当たり演技の沢尻エリカ、大森南朋など見どころたっぷりの『ヘルタースケルター』
沢尻エリカ逮捕の影響で観られなくなる前に是非鑑賞してみてください。