【クソ映画の沼】『ジュラシック・シャーク』は観てくれた人にいかに無駄な時間を与えるかを極めた映画

巨大な歯を意味するメガロドン。約2800万年前に生息していたサメの絶滅種である。史上最も巨大かつ強力な捕食動物で、化石による推定体長は16メートルに達し、海洋生態に深刻な影響を及ぼしたと思われる生物である。


そんな遥か昔に絶滅した凶悪生物が現代に蘇ったらいったいどうなってしまうのか......


人類は無事で済むのか......


今日はそんな恐怖を描いた映画『ジュラシック・シャーク』を紹介します。

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ド頭で書いたメガロドンの解説は実際に映画に冒頭で流れるナレーションをそのまま引用したものです。約2800万年前の古代生物が復活してしまうから『ジュラシック・シャーク』というタイトルである。




......




なにか気づきませんか?


そう。約2800万年前はジュラ紀ではない。だからこの映画はジュラシック・シャークではない。


はい、終わり。解散。


〜Fin〜









といいたいところだがここで終わるわけにもいかないので、ここからはじっくりと解説していこうと思う。


ゴリゴリにネタバレするのでまっさらな状態でジュラシックシャークを体験したいという希有な方はここでブラウザバックしていただきたい。


『ジュラシック・シャーク』予告編


始まって数秒で破綻してしまった今作だが、ジュラシックではないとかそんなことはほんの入り口に過ぎない。 この映画のヤバさはもっと別のところにある。


今作を端的に表すと、「無駄じゃない場面が存在しない映画」である。


比喩とかではない。そのままの意味である。
79分全部無駄なシーンである。


そんな映画が存在するのか......
時間を引き延ばすために無駄なシーンをいれた映画は山ほどある。しかし全編無駄なシーンな映画なんて聞いたことがない。


存在するのだ。
存在するのである。
ここに......いるよ......


ここにいるよ SoulJa feat 青山テルマ




舞台はある島。誰もいない穴場ビーチに遊びに来る女性ふたり。ビーチといっても湖ね。 女性のうちのひとりは過去にサメに襲われた過去があるそうで泳ぐことにトラウマがあるらしい。


わかったぞ!このトラウマを抱えた女性がメガロドンとの死闘の末に成長する物語だな!なかなか面白そうじゃねーか.......


一方島の怪しい研究所では石油発掘作業が行われており、悪そうな科学者と悪そうな議長が密談を行っています。

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助手がこれ以上の発掘は危険だと忠告しますが聞く耳を持ちません。


このシーン、何やら難しそうな単語を並べて丁寧にじっくりと描かれますが、よく聞くと深く掘りすぎたということしか言っていない。


で、ボカーン!と研究所が爆発して地震が起きます。


でも女性ふたりは気にせず湖で遊びます。水をかけあいキャッキャするふたり。

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そこに深く掘りすぎたせいで復活したメガロドンが忍び寄る......!


気づかずに水をかけあうふたり......


忍び寄るメガロドン......!


気づかずに水をかけあうふたり......


忍び寄るメガロドン......!


気づかずに水をかけあうふたり......


忍び寄るメガロドン......!


気づかずに水をかけ......いや長すぎない?!


忍び寄るメガロドンと気づかずに水をかけあうふたりが交互に映るくだり長すぎだよ!2回で十分だよこんなの!なんで何回も繰り返すんだよ!


この何回も同じことを繰り返すくだりはこの後何度も出てきます。制作陣は「テンポ」という言葉を知らないのでしょう。


ながーいくだりをやったあとに女性の内のひとりがヌルっと湖に沈んでいきます。
サメに襲われたとは思えないほどにヌルっと沈んでいきます。その後もうひとりの女性もヌルっと湖に沈んで行きます 。


あ、トラウマを抱えた女性はただのサメにトラウマがある女性だったのね。


そして誰もいなくなった湖の映像をバックにヌルっとタイトルがでてきてスタッフロールが流れます。




......


......


えっ終わり!?


なんでこんなにスタッフロール長いの??


これオープニングじゃなくてエンドロールなの??


なんてことを思っているうちにオープニングが終わって場面が変わります。


何も知らずに湖へとやってくるグループ。彼らは美術館から絵画を盗んでこの湖へと逃げてきた怪盗集団です。5人中3人はハゲで、1人は特殊なタンクトップを来ており事ある毎に片乳首が露出します。


手漕きボートで湖を渡る一行ですがメガロドンに襲われボートは転覆、なんだなんだと慌てる怪盗たちと近づくサメが交互に映るくだりを長いことやったあとにひとりが喰われてしまいます。


やっぱりヌルっと沈んでいきます。


ボートが転覆した際に盗んだ絵画を湖に落としてしまい、生き残ったハゲのひとりが取りにいきます。どう考えてもまだサメいるのに。


案の定喰われるのですがこの人のときだけなぜか気合の入った殺され方をします。いやクソなんですけどね。ヌルっと沈んでいくのと比べたらってことですよ?

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さすがにヌルっと死んでいくのばっかりは駄目だと思ったんですかね。もう遅いと思いますけど。


その後フィールドワークに来た大学生グループがきてひとりがヌルっと死ぬなどした後に2つのグループが合流します。


あーはいはい、仲間を失った者同士が一時的に協力してサメに立ち向かうパターンね。はいはい。


と思った僕が馬鹿だった......


ここから驚異の引き伸ばしが始まります。
まず無言でただただ歩いてるだけの場面がひたすら続きます。

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しかしそれだけでは限界がある。でもサメと戦わせると映画が終わってしまう......まだ30分しか経ってないのに......どうしようかな.....そうだ!サメに辿り着かなきゃいいんだ!! そうして監督は名案を思いつきます。人間同士を争わせればいいんだと。


そこからはもーーーーうひどい。
湖に落ちた絵画を取りに行く行かないで争いが始まります。


悪科学者が再登場して物語が動き出す雰囲気を醸し出しますがメガロドンの秘密がどうとかいう展開は一切ありません。わかるのは深く掘りすぎたということだけ。絵画を取りに行かされて秒速で死にます。せっかくサメ出てきたのに一瞬で出番終わりです。

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ていうかこのサメ小さすぎない?メガロドンだよね?どう見ても普通のサメなんだけど。CGが稚拙なのは何も言わないよ。予算ないんだもんね。でも小さすぎない?あと見た目がブサイクなサメとか余計な設定付け足さない方がいいよ。だって水族館に売ってるサメのぬいぐるみと同じ顔してるもん。出来ないことを設定に足すべきじゃないと思いますよ。


秒速で死にゆく科学者を見て怪盗団のハゲのひとりが「早え〜」と呟きますがそれはこっちのセリフだ。こいつ、後に衝撃的なセリフを吐きます。

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その後は特殊タンクトップハゲが銃で脅したり、特殊タンクトップハゲが木のボッコで背中を叩かれて気絶したり、特殊タンクトップハゲが女を湖に投げ飛ばしたり、特殊タンクトップハゲが片乳首を出したりして時間を稼いでいく。

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スローモーションの多用、夕日のインサートなど持てる技術を駆使して時間を引き伸ばし、始まってから約50分。ついに観念したのか遂にサメとの戦いが始まります。 ここまで映画は海に絵画を拾いに行くか行かないかで争っていただけである。というか戦いが始まったと書きましたけど、そのバトルもいかにサメの目を掻い潜って拾いに行くかというものだ。


この映画は79分かけて湖に落とした絵画を拾いに行くサメ映画なのである。


ではどうやってサメの目を掻い潜るのか。答えは簡単。火のついていないダイナマイトを投げ込み威嚇するです。


不思議なことに火がついていないのに爆発するんですね〜。この世界には僕たちの知らないことがたくさんあるんだね。


やっぱり無理だーと言うと特殊タンクトップハゲじゃない方のハゲが衝撃の一言を放つ。


「時間を無駄にするんじゃねえ」


え......それ僕に言ってるの......? ......お前が?


あと十数分で映画が終わるというタイミングでまさかの一言を突きつけられ唖然とする。


監督は僕たちをどこまで馬鹿にするんだ。
こんな無駄しかない映画を作っておいてなんでそんなことが言えるんだ。


このあとの「血が出た、めっちゃ痛い」と言ってるけど血なんてどう見ても出ていないことや湖に入ったのに全く濡れていないことや急にサメが陸に向かって飛んできて怪盗団のリーダーを食ってそのまま湖にワープしたことなんて全部どうでも良い。

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なんかすごく腹が立ってきた。


60分を過ぎたあたりで急にサメを倒さなきゃと使命感に駆られる主人公の相棒にも腹が立つ。主人公も今さら何言ってんの?って顔してるじゃん。渋々サメ対峙に付き合う主人公。


今さらサメ対峙始めたところでカタルシスなんかありゃしないですし、全員食われちまえとしか思いません。


「さあブサイクザメ!ジャンクフードじゃないご馳走はいかがかな!」


全然カッコよくないセリフをめっちゃドヤ顔で発する主人公。 今作唯一の見どころである。


でなんやかんやあってエンドロールに入るんですけど、この時点で経過時間は65分。


え、あと14分あるよと思ったあなた。 正解です。ここからエンドロールの引き伸ばしが始まります。


まずモブキャラ含め全ての登場人物をじっくりと紹介し、それが終わるとめちゃめちゃゆっくりとスタッフロールを流します。 そうして本来2分で終わるエンドロールを14分に引き延ばすのです。


悲しい哉、クソ映画ウォッチャーとしてはエンドロールを飛ばすわけにはいかない。全てを等速で最後まで見てこその鑑賞なのである。 エンドロールはゆっくり文字を見せられるだけだから正真正銘拷問だった。


監督には最後の最後まで僕たちを楽しませる気なんてないのだ。 学ぶことがあるとすれば映画作りにおける無駄がこの一本を見るだけで全て理解できることくらいであろう。


2020年8月10日、三連休最後の1日を僕はジュラシックシャークに奪われた。 自業自得、そうかもしれない。


でも僕は腹が立ったのであなたも道連れにしたい。


Amazonプライムビデオになぜか吹き替え版だけあるので見なよ。U-NEXTにもあるみたいです。 さあ、ほら。

ジュラシック・シャーク(吹替版)

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  • 発売日: 2017/10/27
  • メディア: Prime Video