【クソ映画の沼】生き残りたければお約束を守れ『モンスターフェスティバル』

好きな映画や本、アニメの世界に入れたらなって思うことはありますか?


話の展開を全部知っている俺がこの世界に行けば大活躍できるぞ〜って妄想しないですか?僕はしょっちゅうします。でも毎回「無敵」スキルを装着していきます。だって怖いもん。展開知ってるたってどこで何をどうすればいいのか完璧に覚えていないですもん。保険でどんな攻撃も無効化するスキル身につけてなきゃ例え妄想であろうと生き残れませんよ。


今回はそんな「あの映画の世界に行けたらな〜〜」という妄想を叶える映画『モンスターフェスティバル』を紹介したいと思います。


この映画はタイトルの通りモンスターたちのフェスティバルな映画です。
ふざけたホラー映画好きだよとか、ホラー映画あるあるに共感できる人は楽しめると思います。あとR15指定なのでそこそこグロい。最近のホラー映画はなっとらん!という頑固おやじたちにもおすすめです。

モンスター・フェスティバル(字幕版)

主人公のダックス君はホラー映画が大好きなオタクボーイ。彼は友人たちとハロウィーンの夜に行われるホラー映画の祭典「ブラッドフェスティバル」へ行く計画を立てるが、父親に猛反対され入場に必要なリストバンドを捨てられてしまいます。


というのもダックスは幼いころにホラー映画に影響された殺人鬼に母親を殺されているんですね。それで父親はホラー映画を恨み嫌っているのですが、そんな父親の思いも露知らず、ダックス君はすくすくとホラー映画オタクに育つのでした。どうしても諦めきれないダックスは関係者側で「ブラッドフェスティバル」に参加する友人に頼み込み、何とか参加することができます。


「ブラッドフェスティバル」とはホラー映画のフェスです。フジロックフェスティバルのホラー映画版みたいな感じ。 なにそれめっちゃ楽しそう。僕も行きたい。


ホラーグッズを買ったり、エチエチなお姉ちゃんに見惚れたりフェスを楽しむダックス一行。一通り楽しんだあと、本日のメインイベントが始まります。 ライブなのかトークショーなのかよくわかりませんがメインステージに集まる来場者たち。


司会の人が登場し「お前ら盛り上がってるかー!」的なことをした後、昨今のホラー映画に対する愚痴を話し始めます。 「最近のホラー映画はぬるい!ゾンビは青春恋愛ものに使われたり、モンスターたちがいじられ消費される世の中になってしまった。ホラー映画は死んでしまった!」と演説し始めます。

まあ言わんとすることはわからなくもない。


だってね...


こんなんとか

こんなんとか

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こんなんとか

貞子や伽椰子可哀想だよ。人を呪い殺し恐怖に陥れるために頑張ってきたのに今やみんなに笑顔と癒やしを届ける存在ですもん。なんですか?怖がらせるよりチヤホヤされることに快感でも覚えてしまったんですか?貞子の新作映画とか観ても脳裏にこれらがちらつくから全然怖くないです。


そりゃ怒る人もいるよね。


ちなみにゾンビの恋愛映画はこれかな?

ウォーム・ボディーズ (字幕版)

『ウォーム・ボディーズ』面白いですけどね。




とにかくホラー映画は舐められていると。みんないじりすぎだと。 言っておきますけど僕は舐めていませんよ。ホラー映画をいじったりなんか絶対にしません。ホントにもう全然...


クリリンを殺された悟空のように怒る司会者の合図とともにド派手な演出でレッドという殺人鬼が登場します。


会場爆上がり。エチエチな姉ちゃん二人をステージにあげ、殺します。すごいパフォーマンスだ!と喜んでいると今度は少年レザーフェイスみたいな見た目の集団がでてきて観客を襲い始める。 パニックになる観客たち、そして次々と現れるゾンビにピエロ、ヴァンパイア、殺人鬼などのモンスターたち。


さあ、真のホラーの祭典が幕開け〜。


という映画でございます。
生き残る方法はただひとつ。ホラー映画のお約束に忠実に行動すること。というのもこのホラーフェス、ホラー映画の復興を願うイカレた人たちによる映画撮影なんですね。モンスターたちによる殺戮を実際に行いそれを録画することで真のホラー映画を撮ろうという計画なわけです。だからお約束に則れば生き残れるし、外れれば殺されてしまうわけです。


同じような構造の作品に『キャビン』とかがありますよね。あっちは被害者側はなにも知らないまま襲われますけど、今作は被害者側が生き残る方法を知っている状態で話が進むのでよりギャグ的なメタ要素が強まっていてライトなノリです。ホラー映画の知識を活かしてピンチを乗り越えていくんですけど、うっかりお約束なセリフを言ってしまったりと意図せずにフラグを立ててしまう様子がすごく面白い笑


良い感じのB級感がある良作でした。
僕は超好きです。


ということでお約束に従った行動をとれなかった奴はバンバン死んでいきます。
「これはショーだろ?血も偽物さ!」首ズバーン!「俺は逃げる!」金玉バスーン!
フラグを立てれば死んでしまうのがこの世の理。


でもホラー映画好きが殺されるってなんだか不憫...


主人公の親友役にはMCUスパイダーマンのネッドでお馴染みの、ジェイコブ・バタロン。彼は親友役がすごく似合いますよね。親友界のニュースター。
あと『シャザム』で大人気のザッカリー・リーヴァイも出演しています。秒で殺されます。ウケる。


それからモンスター。分かってます、分かってますよ。みんなが気になるのはモンスター側ですよね。
ここで出てくるモンスターたちはあの映画やその映画でお馴染みのモンスターたちで、盛大に有名ホラーをオマージュしてきます。ホラー映画が好きなら「あ、これあの映画のオマージュだ!」って気づけて楽しいです。


ゾンビならゾンビ映画あるあるな死に方だったり、そのジャンル毎のお約束がてんこ盛りなので、ざっくりとホラー映画が好きって人も楽しめると思います。 死霊館のシスターのヴァラクや貞子、『SAW』シリーズの装置なんかも登場します。


でもたぶん権利関係が難しかったんでしょうね。上記のモンスター以外にも、色んな映画のモンスターたちが登場するのですが、どれもふわっとしています。それでもこれは出したいんだ!っていう気持ちは伝わってくるので微笑ましいです。


で、主人公たちは各モンスターたちに襲われながらも、オタク知識を総動員して突破していくわけなんですけど、このモンスターたち、ちょっとした秘密があって。


こいつら全員人間です。どういうことかといいますと、この子達、自分をモンスターだと思い込んでいる人間なんです。
逆ルドヴィゴ療法的な要領で、同じホラー映画を延々と見せ続けると自分がその映画のモンスターなんだと勘違いしてしまうらしいです。ピエロの映画を観続けたひとは自分をピエロの化け物だと思うようになるし、吸血鬼の映画を観続けた人は吸血鬼になってしまうということですね。


自分をピエロだと思っている人は手がちぎれようがなにしようがケタケタ笑いながら襲ってくるし、吸血鬼だと思っている人は噛みついてきます。ゾンビはどうしているかというと、死体に電気を流して操っています。これならゾンビに殺された人もゾンビとしてよみがえらせることができるってわけですね。


どこまでもメタ的で面白いですよね〜。


でもさ、貞子の人可哀想じゃないですか?


だって貞子になったところでなんにもできないじゃん。ホラー映画のモンスターになったといっても所詮は人間ですからね。超能力的なものは使えないですよ。


貞子はさ、呪いのビデオを観ると殺しにくるわけですよね。ということはですよ、呪いのビデオを観てない人は殺せないわけですし、観てたら観てたでしっかり把握しとかないといけないじゃないですか。


どうやって把握するの?無理じゃない?仮に観たことが分かってもですよ?そこまで行かないと駄目じゃないですか。人間なんで瞬間移動はできないんですよ。


他のモンスターたちはいいよ。自分のテリトリーに来た人間を殺していけばいいだけなんだから。


でも貞子は違うわけ。呪いのビデオが観れる環境ならどこだってテリトリーなんだよ。仮に宇宙とかで見てご覧なさいよ。そこまで行かなきゃいけないんですよ?


本物の貞子なら出来るかもしれないですけど、この貞子は自分を貞子だと信じて疑わない人間ですから。いや、そもそも貞子じゃなくてただの幽霊なのかもしれないですけどここは貞子だと仮定して話を進めましょう。


貞子になるにあたって観せられる映画が『貞子3D』とか最新作の『貞子』とかならいいですよ。あいつらはけっこう好き放題してるから。でも絶対『リング』でしょ。


あとさ、この野外フェスという環境で呪いのビデオ観るやつなんかいないしょ。


もう終わりですよ貞子。なったはいいけどなんにもできない。現に登場したはいいけど、主人公の乗る車を走って追っかけてくるだけですからね。
あぁ、可哀想。


しかもよ。人工的にモンスターたちを作り出しているということは、ひとつのモンスターに対して複数いる場合があるんですよ。で、貞子は複数体います。


本人たちはさ、自分が『リング』の貞子だと思ってるわけですよ。でも実際はこっち。

3Dの方だった。あぁそっかテレビからでてくるのも無理だからこうやってやるのか。


あぁ、可哀想。


「違げえよ!貞子が増えるのは『ループ』からの引用だろ!なんにもわかってねえな!」って思ったそこのあなた。よく考えてください。この子たちが『ループ』読んでると思いますか?


ひとつの映画を延々と見せ続けてモンスターを作り上げるんですよ。原作なんて読んでないでしょう。読んでたら自分は貞子だなんて思わないですよ。


なんで進んでコンピューターウィルスになりたいと思うんですか。もっと別のやつにしてくれよ!って思うでしょ。まあイカれた人たちなので知らんけど。


可哀想に、貞子なのに『ループ』も『エス』も『イド』も知らないんですよ。貞子なのに。


必死にビデオを観た人を探して殺しに行く毎日。ビデオが広まれば広まるほど大変です。 まあそれで忙しいなら本望ですかね。「ブラッドフェスティバル」の会場にいるうちはほぼいるだけの存在ですよ。しいていうならビデオのある家に誘導して強制的に視聴させるとかですかね。でもそれでいいのかな....現に我慢できなくなってビデオ観てないのにでてきて車を追っかけてきますからね。


ああ可哀想。貞子なのに貞子としての特色を何ひとつ享受できないなんて。 これならアイドルとしてチヤホヤされてる方がましですよ。


可哀想、可哀想、可哀想...


僕はなんの話をしてるんですか...?