あけましておめでとうございます。
2022年観た新作映画は142本でした。
ということでベスト10の発表です。
10位『ニトラム』
112分/オーストラリア/スリラー
1996年にオーストラリアで起きた“ポートアーサー事件”
50名以上の死傷者を出した銃乱射事件を引き起こした一人の青年。彼が犯行に及ぶまでの日常を描いた作品です。
実際に起きた事件の犯人に迫る映画はたくさんあるけど、これは特に気持ちが沈んだ。
主観にも客観にも寄らずに坦々と日常を描くため、地獄までの道程をただ見ていることしかできない絶望感が怖すぎて、終わったあとは「こんなの僕たちにどうすれというんだよ......」と呆然とするしかなかった。
実際に起きた事件を映画やドラマにすることに対して賛否があるのは分かるのし、実際の被害者がいるのだから慎重にならなければいけないのは確か。
この映画も加害者に寄り添ってしまう危険性は秘めている作品ではあると思う。
ただ、犯人擁護は決してしていないし、悲劇を繰り返さないために事件について考察をするという意義を持って作られた映画になっているので僕はベスト10に入れました。
9位『ニューオーダー』
86分/メキシコ、フランス/スリラー
楽しい楽しい結婚パーティーが貧困層の暴動によって殺戮と略奪の現場に様変わり。地獄が終わると地獄が始まる。どこまで行っても地獄絵図な激胸クソ映画。
これはホントに地獄としか言い表せない映画。
結婚パーティーが地獄絵図に変わるところから、淡々と悪化していく状況を映し出す作劇に気分が落ち込むどころか、全てが色を失って見える感覚に陥る。
あえて主観を排除した作りなのが良くて、ただただ現実に飲み込まれていくだけしかできない絶望感が味わえます。
グロい描写とかもほぼないので、そういう面でも多くの人におすすめしたいです。
8位『クレッシェンド 音楽の架け橋』
112分/ドイツ/ドラマ
紛争中のイスラエルとパレスチナから若者を集めて、平和のためのコンサートを開こうというプロジェクトを描いた実話ベース作品。
チームでなにかをする系の青春映画でよくある、チーム内での対立だったりそこから和解して......みたいな王道展開をベースに進んでいくんだけど、これがただの若者同士の衝突なんじゃなくて、イスラエルとパレスチナの若者だから“敵対”の意味合いが全然変わって来るんですよね。
憎悪の重さが全然違うから、これが「“愛”が救う。“音楽”で救う」って簡単に言うけど舐めんなよというメッセージにもなっていて、ただの感動映画ではないです。
“愛”や“音楽”だけでは“平和”は訪れないし、人は簡単に理解しあえるようにはならない。ではどうすればいいのか?というところを描いている作品なので、「どうせ感動ゴリ押し系でしょ?」と思っている人にこそ観てほしいです。
7位『ボイリング・ポイント/沸騰』
94分/イギリス/ドラマ
ロンドンの超人気高級レストラン。1年で最も忙しい一夜に巻き起こる人間模様を描く。
『ニューオーダー』とはまた違った地獄映画で心がいたたまれなくなる映画です。
90分ワンカットで死ぬほど忙しい店のドタバタを見せるので、店員のひとりとしてその場にいるかのような臨場感があって、いつ沸騰してもおかしくないキリキリ感が凄まじかった......
誰も悪くない、というか全員ちょっとずつ悪くて、たまたま何か決定的な事が起きてしまって沸騰してしまうという状況はまさに現代社会のどこにでも潜んでいることで、それを90分に凝縮して見せる手腕に感動しました。
6位『THE FIRST SLAM DUNK』
124分/日本/アニメ、スポーツ
言わずとしれた名作漫画を作者自身が脚本・監督を務めアニメ映画化した今作。
予告編が解禁された当初は声優の変更だったり、3DCGアニメーションに文句タラタラだったけど、いざ観るとそんな文句も全部吹っ飛ぶ最高の作品でした。
今までのスポーツアニメでは見たことのない表現の数々でこれはスポーツアニメの歴史を変える作品になるのでは。3DCGを使うとこんなに精巧にリアルな試合を再現できるんですね。
原作では語られなかった視点を中心に展開していく物語にも感動したし、映画館でボロボロ泣きました。
大谷翔平の活躍、ワールドカップでスペインとドイツに勝った日本代表、前だったらアニメの中だけの奇跡だった出来事が現実になっている今、逆にアニメがスポーツを描く意味とはなんなのか。その答えの一つがこの映画にある。
5位『女神の継承』
131分/タイ、韓国/ホラー
タイの小さな村に住む青年女性ミンが原因不明の体調不良に見舞われ、やがて人が変わったかのように凶暴になっていく。ミンの叔母で祈祷師であるニムと村の人々は彼女を救うために奔走するが、事態は思わぬ方向に......
2022年はホラーの年と言っても過言ではないほど、禍々しいものからエンタメ振り切り型まで多種多様なホラー映画が公開されました。
その中でも僕は今作が一番好きでした。
土着信仰(アニミズム)やシャーマニズムを巡る人間の業による功罪を描いており、後半に行くにつれて禍々しさが加速していくのが超怖かった。
悪霊の仕業にしか見えないんだけど、精神疾患とか集団ヒステリーでも説明がちゃんとつくくらいのバランスが保たれているのがすごく良かった。
犬が酷い目に合うよ!気をつけて!
4位『犬王』
97分/日本/アニメ、音楽
語られなかった歴史、失われた者たちの想いを掬い救う室町琵琶ロックオペラ。
2022年で一番ライド感のある映画だった。
現代でできることは昔もできたはずというコンセプトのもと、室町という時代で繰り広げられるロックフェスティバル。これが本当に楽しいし、たしかにこれなら可能かもと思わせてくれる細かな描写の数々。
物語面に不満もあるんだけど、【想像と創造】に限界はないと豊かに語る様に見事に打ちのめされた。
野外で応援上映とかしたいです。
3位『ちょっと思い出しただけ』
115分/日本/恋愛
ダンスの夢を諦め劇場の照明スタッフとして働く照生、タクシードライバーの葉。緩やかに、しかし確実に気持ちが離れていった二人の6年分の“7月26日”を別れ→出会いの方向で振り返り人生の“ちょっと”を描く映画。
僕は恋愛の枠を飛び越えて、人生の機微を描く恋愛映画が大好きなんですけど、今作はまさにな作品。
“ちょっと” に詰まった人生の軌跡。思い出したあとに訪れる朝焼け。切なく、けれど “今” を生きたくなる映画でした。
2位『トップガン マーヴェリック』
131分/アメリカ/アクション
36年の時を経てマーヴェリックが帰ってきた!
自分はいま【映画】を観た!と感じる最高の体験でした。
もう今更言うことないけど、こんなに熱い作品が作れるんだと本気で感動した。
アイスマン大好き。
1位『マイスモールランド』
114分/日本/ドラマ
クルドで生まれ日本で育った17歳の少女サーリャ。ある日、難民申請が不認定になったことから彼女たち家族の日常は一変する。
2022年は今作が圧倒的No.1でした。
「考えさせられた」なんて言葉はとてもじゃないけど吐けない程に苦しい現実と、どうしようもないとわかっていながらそれでも抗おうとする次世代への祈りと希望。
“善良”であることが他者を傷つけているということを否応なく突きつけてくる展開に製作者の覚悟を感じたし、マジョリティ側である自分たちの言い訳という逃げ道が一個一個潰されいく感覚はまさに映画体験。
邦画もこのレベルでやれるんだと再確認しました。
#2022年映画ベスト10
— EPATAY* (@tiiiiiisu) 2022年12月28日
1.マイスモールランド
2.トップガン マーヴェリック
3.ちょっと思い出しただけ
4.犬王
5.女神の継承
6.THE FIRST SLAM DUNK
7.ボイリング・ポイント/沸騰
8.クレッシェンド 音楽の架け橋
9.ニューオーダー
10.ニトラム/NITRAM pic.twitter.com/MjragaU6dx
ということで、2022年ベスト10でした。2023年も心に残る映画に出会えるように願って映画館に通いたいと思います。以上。