応援上映シリーズ第二弾。
今回は『バーフバリ/王の凱旋』です。
バーフバリといえばインド国民を狂乱の渦にいざない、日本でも異例のロングランを叩き出した最強の映画です。
先に言っておくと超ネタバレしているのでご了承ください。
バーフバリ応援上映の様子は何度か映像で観たことがありました。
敵を倒せば湧き上がり、キャラが出るたびに歓声が上がる。
そしてバーフバリ!バーフバリ!の大合唱。
これぞ応援上映といった感じで楽しそう。
そんなバーフバリの応援上映が札幌でやるとの情報が。
前にも一度別の劇場でやっていたがそっちは行きそびれていた。悔しい思いをしていたところにまさかの知らせでテンションが上った。
しかもIMAX。やばい。これは行くしかない。
応援上映は『ボヘミアン・ラプソディ』以来の二回目。
このときは僕含め応援上映初心者といった感じの人ばかりで、少し物足りない結果になってしまいました。
でもバーフバリなら大丈夫だろう。だってバーフバリだから。
バーフバリ初見の友達にバーフバリの魅力をプレゼンして誘ってみたら一緒に行ってくれた。
一人は前作の『伝説の誕生』をみて予習してきてくれてハマったと言ってくれた。
映画好きとして一番嬉しいやつです。
映画館にむかう。
きっと映画館にはカッタッパがいてシヴドゥがいてシヴァガミがいるのだろうな。
ビッジャラデーヴァもいるかもしれない。
映画館に着き周りを見渡す。
うーんやっぱりそういう人はいな、いた。
ちょっとテンションがあがった。
まあでも大事なのは応援上映そのものである。
今回こそは声を出して楽しもう。
はい、またしても風邪を引き喉を痛めました。
応援上映に行くなと言うことだろうか。
声を出すのはやめ、応援上映という空間にいることを楽しむことにした。
うーん。ここまできたらもう応援上映を見守る人になろうかな。
観客は上段真ん中が埋まるくらいだった。
数でいえば100人弱くらいだろうか。
満員とは程遠いが、既に円盤が出ているほど公開から月日が経っていること、平日の夜であることを考えれば多いほうなのではないか。
映画が始まる直前には前説があった。
前説と言ってもスタッフが注意事項を説明して軽く声出しの練習をするといっただけのものだが、『ボヘミアン・ラプソディ』のときはそれもなかった。
・下ネタや暴言はダメ。
・ネタバレになるような発言はNG。
・立ち上がったり暴れるような行為はダメ。
などの注意をいくつかしたのち、発声練習を行う。
バーフバリジャイホー!と何度か合唱し、ついに映画が始まる。
やはりバーフバリは違う。
否が応でも期待が高まる。
最初に制作スタジオと協賛企業のロゴが次々と映し出された。
こんなの前観たときあったっけなーとか思っていると、「○○ありがとー!」という声が飛び交った。
マックありがとー!LUXありがとー!etc...
少しびっくりしたのと同時になんか違う気がするなーと思ったがまあ感謝の気持ちは大事である。
それに雰囲気が良くなるならそれが一番だ。
そしてついに本編が始まる。
悪魔祓いの日、荒ぶる象を鎮めるアマレンドラ。
映画館では拍手が鳴り渡りサイリウムの光が飛び交う。
バリバリバリ ラー バリ
サーホーレ バーフバリ
バリバリバリ ラー バリ
サーホーレ バーフバリ
"バーフバリ万歳"が流れる。一緒に歌ってる人もいる。
王宮前広場に集まった人たちと一緒に叫ぶ。
バーフバリ!
バーフバリ!!
みなまだ声は小さく若干恥ずかしがっている様子ではあったがスタートダッシュは素晴らしい。
声を出しやすい空気はできている。
旅にでるアマレンドラとカッタッパが中継所につくとざわざわしだす。
なんでだろうと思っているとクマラが登場し、今日一番の歓声が湧き起こる。
この"クマラ"の人気ぶりには驚いた。
一番人気のキャラクターが彼だとは全然知らなかった。
このあともクマラがなにかするたびにひときわ大きな歓声が上がっていた。
その後中継所を襲いにきた盗賊たちを稲妻のごとき太刀筋で次々と倒すデーヴァセーナに歓声が響き渡る。
ちなみに、登場人物たちについては解説するのはめんどくさいのでわからない人は自分で調べてください。
アマレンドラ=バーフバリ
シヴゥドゥ=マヘンドラ=バーフバリjr.だということだけとりあえず言っておきます。
そんなこんなでデーヴァセーナにお使えすることになりクンタラ王国に潜入するアマレンドラとカッタッパ。
場面はデーヴァセーナが弓の稽古をしているところへと移る。
一度に二本の弓を放とうとするがうまく行かない。
このとき誰かが言った。
「4本指だよ!」
え?それネタバレじゃない...?
でもそれを言っていたのは一人だけじゃなかったし気にとめる人がいる様子もなかった。
違和感を感じるも映画は進む。
その後も笑いや応援、恋愛パートではおせっかいな親戚みたいな声援が聞こえてくる。
王国に敵が攻めてくる。
いち早く察知したアマレンドラはカッタッパとともにこれを迎え撃つ。
王宮の広間に集まった女性たちは敵の侵略に怯えていた。そこにはクマラも混ざっていて......怯えている。
窓を突き破り現れるアマレンドラ。
クマラに「小心者も必ずや勇者になれると」言い短剣を手渡し去り、残されたクマラは勇気を出し敵に立ち向かっていく。
名場面だ。
場面は移り変わり窮地に陥るデーヴァセーナ。
そこへ颯爽と現れるアマレンドラ。彼は一度に三本の弓を放ち敵を倒していく。
「指は4本、手首は外へ返して」
はい、名場面。
でもやっぱさっきのネタバレだよね。小さなところかもしれないけど伏線回収の場所だよ。
う〜ん、もやもやが消えない。
それから色々あってアマレンドラは母シヴァガミに逆らい王座を剥奪される。
新たに国王に任命されたバラーラデーヴァだったが民衆はアマレンドラを望んでいた。
バーフバリジャイホー!
バーフバリジャイホー!
映画館のみんなも一緒に叫ぶ。
バーフバリジャイホー!
バーフバリジャイホー!
この辺の雰囲気はとても良いのだが。
場面はまた飛んで、シヴァ寺院で参拝をするために民衆が集まる場面。
権力を盾に痴漢をするセートゥパティ。
その手はデーヴァセーナの体にも迫るが彼女は彼の腰から短剣を抜き取りセートゥパティの指を切り落としてしまう。
それが原因で罪人として裁かれるデーヴァセーナ。遅れてアマレンドラが到着する。
事情を聞いたアマレンドラは彼女に「そなたが悪い」と言い放つ。
え、まじかバーフバリ...見損なったよ...
愕然としていると、「切り落とすべきは指ではない、首だ!」
瞬きもせぬ間の一瞬でセートゥパティの首を切り落とす。
うおおおおおお!!!!バーフバリィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!
大歓喜である。
みんなもこのセクハラ対応は見習ってほしい。
ここはかなりの名場面。
また色々あって(この色々の部分もアマレンドラの人望が伝わる名場面)バーフバリの暗殺を企てるバラーラデーヴアとビッジャラデーヴァ。
そしてその計画に巻き込まれ命を落とすクマラ。
間違いなしの名場面。
映画館には悲痛な声が...
時は進みカメラは馬で駆けるアマレンドラを映す。
彼のむかう下には火あぶりにされるカッタッパが。
カッタッパを助け無数の矢を浴びながらも敵をなぎ倒していく。
そして前作ラストの場面へと続きカッタッパの裏切りが訪れる。
涙ナシにはみられない名場面だ。
あれだけ歓声をあげていた人たちも静まり返っている。
サイリウムの光を隠している。
みんながきっと涙を流している。
その後舞台は現代に戻る。
全てを知ったシヴゥドゥはバラーラデーヴァを倒すべくマヒシュマティ王国へとむかう。
で、色々すっ飛ばして話を城門の橋を跳ね上げられ攻め込められなくなったバーフバリ軍のところまで進める。
どうしようもなくなったバーフバリ軍。
どうすればこの状況を打破できる?
その時何人かの人が声を発した。
「木だよー!木を使ってー!」
椰子の木を見て「うぉ?うぉう?おおぅ?」
え...
いや...
だからさ...
それネタバレなんだって!!
ねえ!!
そういうこと言ったらどうやってこのピンチを乗り越えるのか分かっちゃうじゃん。
映画を観ていて「もしかして?」と察するのと、他人の一言や反応で察するのは全然違うんだよ。
やっぱりおかしい。
バーフバリたちは椰子の木を使ってパチンコの要領で城門の上まで飛んでいき攻め込む。
思わず「嘘でしょ?!」と言ってしまうようなまさかの展開。
この「えー!まさかー!」っていう感情になるのが面白いのに。
これじゃ台無しだよね。
ここでやっと気づいた。
この人たち神の視点ノリの人たちだ。
悪い方の。
ここからが私が今回言いたかったことですが、完全に超個人的な思いでしかないのでご了承ください。
神の視点ノリっていうのは、これから何が起こるのか全てわかっている上でウェイウェイするノリのことです。
別の言い方をすると最高学年ノリ。私たち全部分かってますよ?感。
例えば、キャラクターのテーマソングとか登場BGMがあって、それが流れたときに「おぉー?!」みたいなのは全然良いと思います。
初心者の人がいても「え?なになに?」っていうワクワクした気持ちにさせることができると思うので。
あとはシリーズ毎のお約束があってそこで盛り上がるとか。
そういう神の視点ノリは良いタイプのやつです。
しかし、悪い方のこのノリは初心者の人たちを置いてけぼりにします。
自覚あるなしに関わらず、自分たちだけ楽しめれば良いっていうノリだから。
初見を歓迎する気持ちがまったくない。
内輪ノリは良いが"知ってる人だけ"の内輪ノリではなく、スクリーン内"の内輪ノリにならなきゃ意味がない。少なくとも応援上映では。
きっとこの人たちには全く悪気はないのだろうが、今日が初見だという人のことを全く考えていないのだろうな。
公開からしばらく経っていてしかも応援上映に来る人で初見なんているわけないと思っているのだろう。
でもいるよ。
バーフバリに限らず応援上映で作品自体が初めてという人は意外といると思う。
現に一緒に来た友達二人は『王の凱旋』を見るのは初めてである。
『ボヘミアン・ラプソディ』のときも作品を観るの自体今日が初めてと話していた人はいた。
一緒に行った友達はそういう自分たちだけが楽しければいいノリが嫌だったから応援上映はもういいかなと言っていた。
前説のときに応援上映が初めての人?と聞かれて手を上げていた、僕の前に座っていた二人組も「なんか違ったね」と話していた。
非常に残念だった。
バーフバリは最高だったと言ってくれたことが唯一の救いでした。
こんなんだったら少なくとも札幌では応援上映は廃れていって最悪なくなると思います。
だいたいさ、先の展開を喋るって"応援"じゃないじゃん。
「指は4本だよー」じゃなくて「がんばれーデーヴァセーナ様なら絶対できる!」とかでしょ?
「木だ、木を使って」じゃなくて「うわ、まじかよ!もう終わったじゃん!どうすんだよ!」とかでしょ?
なんでお前が指導してんだよ。
なにが「うぉぅ?おぅ?おおぅ??」だよ。頭悪い学生がする煽りかよ。
僕は応援上映とは映画を作品の中に入って観るものだと思っていました。
感情と記憶を一旦フラットにして、目の前で起こってることに声を出して一喜一憂するのが応援上映の楽しみ方だと思っていました。
子供の頃は何回も同じ映画やテレビを観てるのに毎回ワクワクドキドキして観てなかった?
ようするに"その瞬間瞬間"を観てないのが違和感の原因で、これは僕が求めている応援上映ではない。
みんな悪い意味で子どもじゃない。
本当に個人的な思いでしかないけど、大人にもなって最高学年ノリとかもういいです。
大人なら大人にしかなれない小学生になろうよって思います。
途中途中は良かった部分もあるけれど、僕はもっと狂った応援上映がみたい。
ヒーローショーの子どもたちのような歓声が聞きたい。
みんな狂ってたらIMAXの音響だろうが関係なく、うるさいくらいに歓声が響き渡ると思うよ。
大人ぶるなって。
みんな、もっとガキになろうぜ。
理想の応援上映にはいつ出会えるのだろう。
やっぱり東京とか行くしかないのかな。
物語のラスト、金のバラーラデーヴァ像の頭が川を流れていく。
最高に名場面だなあ。
あれ、風邪治ってる。