【感想・考察】映画『鬼滅の刃 無限列車編』原作の欠点を見事に補った再構成力。

こんにちは。本ブログでは映画の感想を書いたり、あなたをクソ映画の沼に引きずり込もうとしたりしています。よろしくお願いいたします。


今回は映画『鬼滅の刃 無限列車編』の感想です。

前半ネタバレなし、後半ありとなっています。


ネタバレ感想に行く前にもう一度忠告しますので見逃さないでね。


ちなみに下記動画を再生しながら読むとよりエモい感じになります。すごーい。画期的だー。


LiSA 『炎』 -MUSiC CLiP-




すごいですよねー、鬼滅の刃。各映画館の上映回数が異次元すぎて......


あんなスケジュール表初めてみました笑


『君の名は。』のときとかもこんな感じでしたっけ?当時あんまりスケジュール一覧とか見てなかったからわかんないや......


チケット争奪戦もエグかったですよね。他の映画のチケットが取りたいだけなのに鬼滅の刃のせいで全然サイトに繋がらないし。


あらためて人気の凄さをまざまざと見せつけらました。


『鬼滅の刃』は連載開始した時から週刊少年ジャンプで毎週読んでいましたけど、こんなに人気になるなんて思わなかったですもん。


薦めても「絵が苦手」って言われて全然読んでくれないし、打ち切りになりそうな雰囲気すらあったし......


アニメ最終話の下限の鬼が解体されるところだって今でこそ衝撃展開みたいな感じになってますけど、本誌で読んでたときは
「急展開させないとヤバいのかな......せっかく面白くなってきたのに......」と思ってましたね。


それがアニメが始まった途端にあんなに人気になっちゃってびっくりですよね。


正直こんなにまでなる理由はよくわからないですけど......


アニメが面白いのは間違いないですよ。作画は神すぎるし。


でもグッズが出るたびにチリの一つも残さず一瞬で消えていく程のものでもないような気がするけどな......


人気が爆発した理由を調べても、「いやいや笑 そんなことはわかってるんだよ、そういうことじゃないんですけど笑」っていう解説しかなくてイマイチピンとこないんですよね。


人気なことに不満があるとかではないし、面白かったのは確かなので別にいいんですけど、未だにモヤモヤしてるので誰か分析できる人いたら教えて下さい......


映画の話に戻りますね。


こんなに人気のある『鬼滅の刃』。いつもだったら、普段あまり映画を観ない層の人たちが映画館に溢れかえることにブーブー言ってるところですけど、今となってはそんなことも言ってられない。


『ムーラン』『ソウルフル・ワールド』の劇場公開を取り下げ、今後も配信を中心に考えていく方針を発表するなどディズニーが鬼に堕ちてしまったいま、 「炭治郎、そして鬼滅ファンたち、君たちが映画館を支える柱になるのだ。俺は信じる。君たちを信じる。」
という気持ちしかありません。


『天気の子』超えくらいの興行収入はあり得るんじゃないかなー。余裕で越えましたね。まさかの『千と千尋の神隠し』越えも見えてきました。鬼滅人気恐るべし......


ということで感想にいきましょう!





『鬼滅の刃』


劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 本予告 2020年10月16日(金)公開

監督:外崎春雄
原作:吾峠呼世晴「鬼滅の刃」(集英社ジャンプ コミックス刊)
脚本制作:ufotable
キャラクターデザイン:松島晃
総作画監督:松島晃
音楽:梶浦由記、椎名豪
キャスト:花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞 、日野聡、平川大輔
主題歌:LiSA「炎」(SACRA MUSIC)
配給:東宝、アニプレックス

アニメ「鬼滅の刃」公式ポータルサイト





これから観る人は是非IMAXで!

出典:オフィシャルサイト

個人的にはこの「無限列車編」は漫画の人気を立て直す一つのターニングポイントだったのかなと思います。


面白くなってきたなーと思ったのは伊之助が出てきたあたりなのですが、“ジャンプらしさ”が一気に出てきたのはこの「無限列車編」だったような気がします。


『鬼滅の刃』がガッと勢いに乗った章で、僕的にめちゃめちゃ面白かったなーという記憶があるエピソードだったので映画化はすごく楽しみでした。


で、感想なんですけど、大満足でしたよ。観たかったものは全部観れた!って感じです。


神としか言いようのない作画に加えてカメラワークなど魅せ方もすごく上手くてバトルシーンは興奮しっ放しでしたし、なにより今作の持つパワーが強すぎる。一度も勢いを途切らせることのないままラストまでもっていくエモーショナルさは圧巻でしたね。


人気作なだけあってパワーは相当ですよ。


ちなみに僕のおすすめ鑑賞方法は、ジャンプ44号、45号に掲載の外伝漫画、そして46号掲載分の42ページまで読んで映画を鑑賞。そしてジャンプ46号に掲載の漫画の残りのページを読む。


この順番がおすすめですね。単行本で予習しておく必要はないと思います。(ジャンプ44号に掲載の外伝漫画は、入場者特典に掲載されているものと同じです。)


パンフレットやグッズを買いたい人は一時間前には映画館へいった方がいいかも。めちゃくちゃ並ぶので。午前のなるべく早い時間の上映回がいいと思います。人も比較的少ないし売り切れの可能性も少ない。お昼時や夕方に行くと地獄ですよ......


あとは鑑賞前に買っちゃった方が良いと思います。観賞後に買おうとするとそれこそ大行列になるので。パンフレットの通常版と豪華版の違いは、三方位ケースとドラマCDがついているかいないか。パンフレットの内容自体はどちらも同じです。僕はそんなに欲しくもないのに勢いで豪華版を買ってしまいました。


それからそれから!出来ればIMAXで観て欲しい!音響が段違いで迫力も何倍にもなるので是非ここは奮発して......そして素晴らしき映画の世界にのめり込みましょう。


といったところで、正直おもしろかった以外の感想はないんですけど......さすがにそれで終わるわけにもいかないので頑張って引き伸ばしますね。


ということでここからはネタバレありになります。


まだ映画を観ていないよという方、ネタバレが嫌だという方はここでブラウザバックしていただければと思います。観賞後にもう一度読みに来てくれると嬉しいです。


この先も読んでくれるという方はよろしくお願いいたします。是非あなたの感想も聞かせてください。





圧倒的神作画と演出力

出典:オフィシャルサイト

やっぱり『鬼滅の刃』のアニメといえば作画ですよね。今作もものすごく気合が入っていて、わかっていたのに度肝を抜かれました。


オープニングの林のシーンとかもさらっとやってましたけどとてつもなかったですからね。えぇ......?実写!?って思いましたもん。


ただ、作画がいくら神でもそれだけなら作画やばいなーだけで終わって面白さには繋がりません。


『鬼滅の刃』アニメの真にすごいところって実は作画じゃなくて、演出力と再構築力だと思うんですよ。


後者については次で言及しますね。


演出力ってなにかというと、アクションや世界観をいかに魅せるかという意味です。


それはカメラワークだったり、2Dと3Dの使い分けだったり、エフェクト、色彩や音楽だったり色々とあるんですけど、そのどれもがここ!っていうタイミングやバランスで組み合わさっていて、観客のエモーションを操っています。


映画でも同じように場面によって音楽のトーンを変えていますし、時に3Dで世界の奥行きや広がりを表現し時には2Dで劇画調に描くことで一枚絵の力強さを強調したりなど、作品を魅せる演出が冴え渡っていました。無音の使い方も素晴らしかったです。


また、カメラワークはかなり立体感が意識されており、戦闘の流れがすごくわかりやすい。


原作漫画は一枚絵は力強さもあり繊細さもありで素敵なんですけど、流れの中の絵はあまり上手い印象がないんですよね。あとは背景の書き込みも少ない印象です。それが時代背景と合っている部分もありますけど、そのままアニメにすると結構致命的な欠点になるわけです。


そこをアニメは見事にカバーしているんですよね。原作の持つ力強さ・繊細さを残しつつ、流れの中の魅せ方にもかなり拘っていてそりゃ面白くなるわ。





原作からの再構築

出典:オフィシャルサイト

原作漫画の魅力の大きな要因は“分かりやすさ”と“テンポの良さ”にあると思います。


分かりやすさがなにかというと、まず『鬼滅の刃』って様々な名作漫画の良いところをたくさん取り入れているんですよね。


これは○○だ、これは△△だっていうのが読んでてよくあります。


パクリだとかそうことではないですよ。勘違いしないでくださいね。


だからここが見せ場だっていうのがすごくわかりやすいんですね。読み手側がエモーションの上げ下げを感じやすい。


それから、登場人物は自分の感情の喋りまくりますよね。


全部喋ってんじゃないかってくらい喋ってる。


プラス原作はセリフで説明できなかったことをナレーションを使って説明するのでよっぽどのことがない限り「わからない」という状況が発生しません。


それはもちろんアニメにも受け継がれているので、作風はダークだけど誰が観ても分かりやすくてカタルシスを感じやすく、そこが子どもにも人気がある要因なのかなと思います。


ただ、一方でこれらは欠点でもあって、原作漫画はセリフとナレーションで説明しすぎていて余白があまりないんですよね。加えてさっき言ったように流れの中で見せることがあまり上手くないので見せ場も100%伝わりきっていない部分があるのではないでしょうか。


“テンポの良さ”に関しても同じで、『鬼滅の刃』はとにかく展開が早くてエモーションが途切れることがほぼないです。次から次へと見せ場が展開していってサクサク読めるわけです。


このスピード感っていうのもYouTubeやTikTok全盛期の今の時代とマッチしたのかなと思います。


ただ、展開が早い分各要素の掘り下げというのが足りなくて薄くなってしまっている部分もあります。実際回収されていない伏線とかもたくさんありますし、キャラの魅力も伝わりきっていないんじゃないかと思います。


こういう良さでもあり欠点でもある要素をもった『鬼滅の刃』ですけど、アニメはその欠点の部分を限りなく消すことに成功しているんですよ。


それが原作からの“再構築”です。


具体的にどういうことかというと、例えば今作の冒頭、産屋敷が墓参りをするシーンは映画オリジナルです。あってもなくても物語の進行には影響はないシーンなのですが、これがあることで今作のテーマである「継承」というのがより強調されているわけです。


原作通りのシーンの中でもちょっとした変更点を入れていて、例えばそれぞれの夢の中のシーンでは炭次郎や煉獄の夢の中を原作よりも長く描いています。これで夢の中の多幸感、またキャラの抱える背景を絵で見せることができています。そしてそれはクライマックスの感動にも繋がってきますよね。


他にも戦闘シーンでは、例えば炭次郎vs魘夢。


催眠を解いた炭次郎が魘夢の首を切り落とすまでの流れ、原作ではほとんど動きがないんですよ。特に魘夢は炭次郎が術を何度も解くことに困惑しているうちに首を斬られるので一歩も動いていないんですね。


でも映画では炭次郎の斬撃をかわして術をかけるという攻防が描かれていて、動きと迫力のある戦闘になっています。


また、炭次郎が術を解く際に自決する様子を繰り返し入れることで炭次郎の胆力の強さ、魘夢の困惑がより強調されています。また、何度も何度も自決シーンを見せられているので慣れてくるし、何ならちょっと面白くもなってくるんですけど、そのタイミングで実は現実世界でしたパターンが来るので「ひぇっ!!」という肝が冷える感覚が倍増するんですよ。


鬼の造形もより怖く、気持ち悪く改変されています。基本的には原作より大きく描かれていますよね。最初に煉獄さんに倒される鬼もそうですし、魘夢が首だけになるところも原作よりも太く長くなっていて気持ち悪さが倍以上になっていました。


煉獄vs猗窩座の場面では、動きの広がりを強調してスピード感を出しています。これは演出面の話になっちゃいますかね。まあ、それによって二人の異次元さっていうのももちろん出ますし、何より最後の動かないという状況がより際立つのです。


これらは一部分ですけど、このようにアニメでは丁寧に丁寧に地味な要素を積み重ねることで、原作の持つ魅力が何十倍にも膨らんでいるんですね。





悪かったところ

ただ、何もかも文句なしに最高!というわけではなくて悪かったところもあります。


ストーリー面はやはりアニメ表現で補い切れるものではないですよね。


というのも、煉獄を重要キャラとして展開させるためにはやっぱり描き込みが浅いんじゃないかなーと思います。


先述したとおり、アニメでは夢のシーンをより詳細に描くなど、可能な限り煉獄の人物描写を増やしてはいますが、それでもやっぱり足りない。


これは『無限列車編』どうこうじゃなくて『鬼滅の刃』という作品そのものの話になっちゃいますが、テンポ感ゆえの弊害っていうのはやっぱりありますねー。


この流れの中だと、炭次郎たちが煉獄に憧れる要因って強さ以外にないじゃないですか。死際の会話シーンというので煉獄の優しさと信念というのは伝わってはいますけど、もっと前からそこの優しさの部分に触れるべきじゃないのかなーと思います。


力技で感動シーンに持っていってはいますけど、猗窩座戦までの煉獄のイメージって強いけど異常な人だと思うんですよね。もっと炭次郎たちとの関係性の構築をじっくり描いてもよかったのかなと思います。


現に特典の外伝漫画っていうのは煉獄の作品内では伝わりきっていない人間性を補完する話になっているわけで、だったら本編でもうちょっとじっくり描いてよって思ってしまう。


外伝漫画を先に読んで欲しいっていう理由はここにあります。


正直煉獄である必要性は全くないですよね。なんなら煉獄ではなく冨岡義勇があそこで死ぬ方が物語的意味は生まれたし泣けたんじゃないかとさえ思います。


だからすごくもったいないなという気はしますねー。





ギャグパートは正直......

あと、これは本当に個人的な好みの問題になっちゃうんですけど、正直ギャグパートは結構スベッてませんでした......?


いやまあ、全部ではないですけど、笑ったところもありましたし。


でも7割くらいはスベッてた気がします......


けれどそれもそんなに気にならない範囲ではあるというか、スベってんなーと思う前に次の展開に進んで感情をカッケー!スゲー!の方に持っていってしまうところがありました。


結構強引というか、力技でエモーショナルに持ち込むのも良い悪いというか、素直に感心しちゃいましたね。


うん......でも冷静に振り返ってみたら劇場でもあんまり笑い起きていなかったしスベッていたような......


ここは逆に原作ではあまり感じなかったんですけど、アニメでは五月蝿いなークドイなーとか思っちゃいましたね。あとは煉獄さんの変なところっていうのがラストまでずっとチラついちゃっていたというのも正直なところですね。


この辺のチューニングが上手くいっていたらなーとは思いました。


笑った人を否定したいわけではないで、ご理解ください。





最後に

出典:オフィシャルサイト

とはいえ全体的には大満足でございます。見たかったアニメ『鬼滅の刃』は十二分に堪能できました。


「那田蜘蛛山編」で己の弱さを痛感した炭治郎たちが死に物狂いの修行をして強くなってもなお届かない柱。


その一人が殺されるという絶望は計り知れないですし、そこに直面した炭次郎たちの慟哭はすごくエネルギーがありましたし、自分の無力さを受け入れてなお進むことを選ぶという“選択”と“継承”の物語に泣かされました。煉獄さんの死そのものが......というよりはその辺に感動しましたね。


だから一番感動したのは伊之助の精神的な成長です。彼が炭次郎を激励するところで泣いちゃいました。


あとは言葉選びがめちゃめちゃ良いですよね。


さっき『鬼滅の刃』の良さは“わかりやすさ”と“テンポ感”って言いましたけど、最大の魅力はこの“言葉選び”にあると思います。


生殺与奪の権を〜のくだりもそうですし、煉獄さんの最期の言葉もすごくよかったです。


言葉選びのセンスがあるからセリフが多くなっても必要以上には気にならないし、ここぞというところでエモーションを爆発させる要因にもなっているのではないでしょうか。


それと映画館に活気が出るのが素直に嬉しいですよね。関係者でもなんでもないですけど、こうやって多くの人が映画館に足を運んで大きなスクリーンで感動して帰るっていうそれ自体にジーンときます。


あんなに映画館が混んでいて行列ができている様子なんて超久しぶりに見ましたもん。


人生で初めて映画館にきたっていう人もたくさんいるでしょうから、これを機に映画館の魅力にのめり込んでくれるといいなー。


ということで読んでいただきありがとうございました。あなたの感想も是非聞かせてください。