【感想】『るろうに剣心 最終章 The Final』どうしてこんなストーリーになってしまったんだ

『るろうに剣心 最終章 The Final』の感想です。原作は未読なので映画シリーズとしての感想です。でもざっくりとは原作でどんなことがあったとか知っているのでその辺の話は触れるかもです。


途中からネタバレありです。ネタバレに行く前に忠告しますので、見逃さないでくださいね。


ちなみにネタバレくらってから観ると面白さ80%減するくらいの激アツ場面あるのでマジで気をつけてください。


あと、これはすごく重要なので先に言っておきますけど、【感想】ですからね!


「それは個人の感想だと思います」みたいなコメントしてこないでね。感想って言ってるんだから。


では。




『るろうに剣心 最終章 The Final』

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監督:大友啓史
脚本:大友啓史
原作:和月伸宏「るろうに剣心ー明治剣客浪漫譚」
主題歌:「Renegades」ONE OK ROCK
音楽:佐藤直紀
アクション監督:谷垣健治
撮影:石坂拓郎
照明:平野勝利
美術:橋本創
出演:佐藤健、武井咲、新田真剣佑、青木崇高、蒼井優、伊勢谷友介、土屋太鳳、有村架純、江口洋介、三浦涼介、音尾琢真、大西利空、阿部慎之助、柳俊太郎、丞威、成田瑛基、北村一輝






ルック100点、アクション80点、ドラマ5点


まず、良かったです!真剣佑の雪代縁がめちゃくちゃカッコ良かったし、アクションにもさらに磨きがかかっていて素晴らしかったですし。


でも、手離しで褒められるような作品でもないんじゃないかなという気がします。


正直、ドラマ部分お粗末すぎでは......


「邦画にしては」とか「邦画において」みたいな決まり文句がよく使われますけど、アクションやルックが良ければストーリーはどうでもいいみたいなのってそれこそ今の邦画がいるステージじゃないっていうか、みんな邦画のこと下に見過ぎじゃない?って思います。


もちろん邦画とかハリウッドとか関係なく、一点突破を極めた映画っていうのはたくさんあるし僕もそういう映画大好きですけど、るろうに剣心に関してはストーリおざなりで良いタイプの作品ではないと思うんですよね。


で、結局そこのせいで、アクションのエモーショナルも100%引き出せていないですし、パワーアップしているにも関わらず、前3作を大きく超えるような興奮は感じなかったんですよねー。


ルック100点、アクション80点、ドラマ5点っていう感じです。


作品自体にはどちらかといえば支持派なんですけど、「いやもっとできたんじゃない!?俺たちのるろうに剣心はこんなところで満足するような作品じゃねーよな!」って感じです。


まあー、求めすぎだっていうのはわかっているんですけどね。メイキングの映像とか見たら俳優陣の努力とか想像もできないほどに凄まじいですし、漫画の実写化作品としてここまでのものを見せてくれたならそれ以上を求めるのは......っていうのはわかっているんですけど、それでも......


ということでここからはネタバレありで詳しく書いていこうと思います。 まだ観ていないよって人はここでブラウザバックしていただければと思います。観賞後にもう一度読みに来てくれると嬉しいです。この先も読んでいただける方、ありがとうございます。是非とも最後までよろしくお願いいたします。





ルックについて


まず実写『るろうに剣心』シリーズの素晴らしいところってルックですよね。


キャラクターの再現度ももちろんのこと、画面の質感が最高なんですよ。時代劇で、しかもリアル志向な世界観であるけれど、ルックはその逆というか、リアルとフィクションの間を上手く捉えたルックで、これまでの邦画の漫画実写化作品には見られなかった質感なんですよね。


漫画によりすぎると、嘘っぽさが強くなるし実写でやる意味ないじゃん。アニメでよくね?ってことになる。かといってリアルに寄せすぎて、漫画のもつファンタジーさを消すとそれはそれでわざわざ漫画を実写化する意味ないじゃんとなる。


でもるろうに剣心シリーズってリアルベースな世界観でキャラクターが現実にはありえない動きをしていても違和感がないですし、逆に漫画のような派手派手なエフェクトや大見得切がなくても、漫画を読んだ時のようなエモーションを感じることができるんですよね。


リアルとファンタジーがちゃんと共存しているんですよ。


それを可能にしているのが、映画のルックで、これは考えに考え抜かれたバランスの撮影だと思います。キャラクターだって、ただ見た目の再現度が高いから良いのではなくて、時代劇としてリアルな世界観に違和感なく存在できているからすごいんですよね。本シリーズにしてもすごく冷静に見たらメインキャラクターの見た目が周りの世界観から浮いてるなって思いますからね。


お前、それはどういう気持ちでその格好しているんだろうとか思うし、剣心だって前髪が直毛だったり、明らかにアイロンで癖つけてるなって時があって「剣心は朝一生懸命髪をセットするのかな」とか思っちゃったりとか、それはどうなんだろうっていう部分はやっぱりあるんですよ。


けどそこを究極的にリアルにしちゃったら漫画的な個性はゼロになっちゃいます。


妥協っていうとあれですけど、少年バトル漫画の実写化である以上どこかで線引きは必要ですし、その線引きをした上で限りなくリアルを感じさせないといけないんですけど、ここで映画のルックが変だと、キャラが以上に浮いてしまったり、ギャグっぽくなってしまったるするわけです。


そういう点から、今作のルックは完璧なんですよね。


また、光の使い方なども絶妙で、特にThe Finalは画面全体でストーリーを表すというのがめちゃくちゃ上手いです。


クライマックス、剣心と縁の戦いが終わると夜明けが来て朝陽に包み込まれた瞬間、縁が巴の日記を受け取り読むときに、暗い牢屋の中に暖かな光が差し込む瞬間、それぞれが抱え込んでいた闇が晴れていく瞬間というのを見事に表現していました。


まさに「The Final」であることを象徴するような一瞬です。


このように、映画の良さを何倍にも引き立てるような素晴らしいルックでした。





ドラマについて


次にアクションって言いたいところなんですけど、分け合ってこっちについて先に話した方がいいと思うのでドラマ部分について話します。


まあーーーーー問題はここですよね!


みなさんはどう思いました?


正直、僕はひどいなと思いましたね。アクションとルックで誤魔化しているけど、内容めちゃくちゃ薄くないですか?

えーと、まずですね、今作っていうのは前3作と比べて極めてパーソナルな物語なわけですよね。

だってお姉さんを殺した剣心に対する縁の復讐劇なんだから、世界がどうとかは全く関係がないことです。


前3作っていうのは、剣心が人斬り抜刀斎として暗躍したことで作り上げた世界の闇との向き合いを描いていると思います。

自己と世界ですね。


人を殺めて平和を作り上げた剣心が「人を活かす剣」で世界と向き合っていくわけです。


で、今回の続編ですよ。これまでと違って剣心は極めてパーソナルな問題へと向き合わなければいけなくなるわけじゃないですか。世界はどうとか、責任がどうとかじゃなくて、自分が未来へ進むための物語で“俺”が生きていくための映画なんです。


それは原作を読んでいるどうこうの話じゃなくて、『伝説の最後編』の後の物語を作るならそれしかないんですよ。


るろうに剣心から緋村剣心になる物語しか成立しないわけです。


でもそれが今作にあったかといえば、ないんですよねー。なんか剣心は答えを見つけたみたいな感じになって終わってますけど、さっぱりわからない。


縁が救われていくのはまだわかるんですよ。薫と巴を重ね合わせて、巴が剣心を心から慕っていたことは事実だったと認めてさ。


お姉ちゃんの死は剣心のせいじゃないとわかっていたけど、剣心に恨みを向けることしか前に進む方法がわからなかった。そういうことに最後の最後で気づくわけですよ。そして自分の弱さと向き合って、復讐よりも守ることを選ぶ。


それはすごく良いと思います。


ただ、一方で剣心にはどんな心の変化があったかといえば、冷静にみたらなんにも無くないですか?


あの手この手で説明描写を差し込んで、あとは佐藤健の顔で乗り切ろうとしているけれど、映画の進行のための説明描写でしかなくて、剣心の物語としては説得力が全くないんですよ。


それから、縁と剣心の対比も不十分です。


説得力云々は置いておくとして、最終的な答えとしては剣心はもう一人では無く、剣心を想ってくれる仲間たちがたくさんいて、あなたのために自分の命を大切にするっていう選択で終わるじゃないですか。


に対して縁の仲間たちは自分しか見えていないから一枚岩ではないし、目的もバラバラ。


ってことは、最終章を謳うなら前作以上の総力戦と個々の成長を描かなきゃいけないと僕は思うのですが......


けれど剣心と縁以外のサブキャラはもれなく全員超絶雑な扱いで、とりあえず見せ場を作らなきゃいけないから戦っているだけ。


操が青紫に技を使って中ボスを倒すとか、宗次郎はるろうになっていて剣心と共闘するとか、そんなんで意思は次の世代へ受け継がれていくとかも正直観客を舐めてると思います。


そもそも、なんであんなに壮大な物語にしようとしたんですかね。


剣心の全てを奪いたいっていうのはわかるけど、日本転覆まで行っちゃうと最初に言ったパーソナルな物語っていうのとかなりズレが出てくるし、『京都大火編』『伝説の最期編』の繰り返しになる上にスケールダウンするという最悪な現象起きちゃってるじゃないですか。


前作とは違うことをしようとして結局同じことをしているっていう状態になっちゃってると思うんですよね。


で、そのストーリーの雑さが、目玉のアクションにも影響を与えちゃってるんですよ。





アクション


基本的に『るろうに剣心』のスピード感と圧倒的な手数で魅せるソードアクションは僕も大好きです。そこに不殺であるがゆえに生まれる緊張感が加わってめちゃめちゃ楽しい。


で、今作は個々人のアクションのレベルがかなり上がっていると思います。


ただ、見せ方がいつもと変わっていないというところと、ストーリーがアクションについてきていないというところで、前作ほど気持ちよくないんですよね。


例えば、市街地戦の場面ですが絵面としては壮大なのに、実際に戦闘が行われているのは家の中ばかり。るろ剣のアクションは狭い空間が映えるというのはわかりますが、それなら舞台をわざわざ広大にする必要はあったのでしょうか。


また、サブキャラの扱いが基本的にめちゃくちゃ雑なので、最後の乱戦も全然面白くない。シリーズ最終章を謳うなら、剣心以外の成長も描かなければいけないわけですよね。


特に一作目から出ている弥彦や左之助にはその役割を担わせるべきだと思うし、その方がアクションにさらに幅と奥行きが出ると思うのですが、いかがでしょう。


尺の都合があるのはわかります。ただ、アクションにストーリーを載せるというならできるはずだし、無駄に繰り返す回想場面や説明されなくてもわかるよって場面の尺をサブキャラの物語に使えば十分できると思いますけどね。


ああ、あとラストバトルに関しても、中途半端に日本転覆という要素を入れたがために、どうしたって志々雄真の存在がチラついて、相対的に縁が弱そうに見えるんですよね。だって志々雄は1対多数でやっと勝てたのに対して縁戦は1対1ですからね。しかも剣心がラストバトルを迎えるに至って成長していないから余計にそう見える。


さらにね、薫がいた場所、あれ何!?


さすがにおかしくない?????


あそこが意味わかんなさすぎて、ラストバトルのエモーションめちゃくちゃ削がれたんですけど。


アクションが第一にあって、というのは全然いいんですけど、その脇を固める要素があまりにも雑すぎて肝心のアクションにマイナスの影響を与えていたら本末転倒じゃないですかね。


そこをストーリー重視の『The Beginning』で補うとして、仮に大傑作だったとしても、『The Final』の評価が変わるかといえばそれは絶対に変わらないです。一個の独立作品として存在している以上、やっぱりあのストーリーの雑さは擁護できないかな。





最後に


結構辛辣な感想になってしまいましたが、どちらかといえば支持派ではありますし、アクションもやっぱりすごいなと思う場面も多々ありました。それに最初に書いたようにルックは素晴らしいですし、何より演者の顔面力が強すぎる。


ただ、そのゆえに演者頼りの作品になってしまっている感は否めず、邦画アクションの新たな時代を生み出したシリーズだからこそ最終章を持ってさらに新しいフェーズを見せて欲しかったです。


アクションが良いだけなら他にもたくさん素晴らしい作品がどんどん出てきていますし、これを邦画の到達点とか言っちゃうのはすごく残念なことだなと僕は思います。


うん。


まあでも『The Beginning』楽しみに待ちたいと思います。では。